外食を凌ぐ
先日、東北地方の県医師会の講習会で、講演する機会があった。私は温泉大好き人間であり、温泉旅館も含め、三日間ほど外食することとなった。さて、私の塩分摂取量はうまく調節できたであろうか、気になるところである。
行きの列車の中、自宅での食事が間に合わず駅でサンドイッチを買う羽目になり、あろう事か、このサンドイッチは迷って選んだ割には塩辛いものであった(失敗!)。温泉旅館は、インターネットで夕食・朝食ともバイキング料理のコースを申し込んだ。これは、大成功。妻も同行したので、間違って味が濃いものを皿にもっても「食べて」と渡すことができ、薄味と思えるものを選択することができた(妻は幸いにも低血圧気味)。この旅館、ほうれん草のお浸しは茹でたままのものを盛ってあり、好みで出汁を掛けるようになっていた。これはありがたかった。もちろん、生野菜のサラダは、気にすることなく皿に盛りつけられ、ドレッシングを掛けなければ塩分ゼロにできる。長らく食したことのない笹かまぼこも1切れいただくことにした。天ぷらと刺身は、いつもの通り、つゆなしとわさびのみで美味しくいただいた。塩辛いかどうかわかりにくいものは、少量とってみて、大丈夫であればあとでまた取りに行けばよい。何度でも行けるのがバイキングの利点だ。朝食はさらに上手に無塩、低塩のものを選択することができ、新米のおいしさに感謝しつつ朝食を終えた。
講演のあと、焼き肉をいただいた。この焼き肉料理は誠に美味しかった。しかし、わたしは、たれは一切使わず、焼いたものをそのままいただいた。幸い、前もって調味料に浸したものは1品しかなく、薄い塩味がある程度であったので、ほとんど、調味料を使わない食事としていただくことができた。そのあと、冷麺も少しいただいたが、汁は吸わないので、これも、たぶん、わずかな塩分で収まったのではないかと思った。
麺類好きの私にとって、東北に行ってそばを食べないと言うことはあり得ない。ましてや新そばの季節である。昼食に天ざるを注文した。天ぷらは天つゆは使わないのでほとんど塩は入らない。そばは、つゆを使うが、ざるから新そばをつまみ上げてその裾の部分に少しだけつゆをつけて食べる。なんでも、ものの本によると、そば通のそばの食べ方はこのようにして食べ始め、最初にそばの香りを楽しむと書いてあった記憶がある。私は、始めだけでなく終わりまでこの食べ方をする。これで、塩分はほとんど入らない。たぶん、食塩1gまでに収まっていると思われる。
夜、京都駅に着いたので、いつものピザ料理を食べてから帰宅することにした。いつも頼むサラダ(ドレッシングなし)を頼み、メインの肉料理は、ソースのかかってないところを食べた。
そのようなことで、気をつけた食事をしたと言っても、さすがに外食が3日ほど続くと、塩分もそれなりに入ったのではないかと思っていたが、帰宅して夜の10時過ぎにいつものナトカリ比計で尿を計測すると、何と、想像したよりもずっと数値は小さく、いつもより0.5ほど高めではあっても1.1と上等であった。笑い話であるが、同僚の一人がうなぎどんぶりを食べたあとは7もあったとか。それにくらべれば優秀である。しかし、これは尿に反映するのが遅いのかと思い、用心してその後2日間は頻回に尿中のナトカリ比を計測したが、昼間はいつもと余り変わらない1未満の値であった。
結論としては、普段よりも外食で塩分は多く摂取したが、それなりに注意して料理や食品の選択をすると、その後の尿中ナトカリ比から類推すると、日本高血圧学会の基準1日6g未満には収まっているのであろうと思えた。今回は、いかに自宅での、あるいは普段の減塩や食塩無添加料理の習慣に慣れておくことが大切かを物語るものであった。そのことにより、外食であっても、自然と食塩が入らない食品の選択や食べ方ができたのだと思えた。
外食の凌ぎ方を以下にまとめる。
1.バイキング料理をなるべく選ぶ。
2.濃い味付けのものは食べない。
3.味付けのものは少量とする。
4.ソースやドレッシングは掛けないでと注文する。あるいは、別にして、と頼む。
(たいていのレストランでは対応してくれる)
5.おつゆは大敵、少量に心がける。
6.天ぷら、刺身などは塩分を使わなくても美味しく食べられる。
以上がうまく実践できるかどうかは、結局のところ、各自の日頃の減塩達成度がどの程度できているかによるであろう。