(『高血圧の話』のご紹介)
高血圧とは何か、どうして恐いのか、予防と治療について必要な知識などを、患者さんにわかりやすく解説した小冊子をご紹介します。当会および日本高血圧学会、ささえあい医療人権センターCOMLが協力して最新の高血圧治療ガイドラインに沿って解説しました。
高血圧に関してよくある質問をまとめています。当会の以下のQ&Aと合わせてご活用ください。
『高血圧の話』の詳細は日本高血圧学会のホームページでご確認ください。
電子版(PDF形式)の閲覧も可能です。
(日本高血圧学会)一般向け『高血圧治療ガイドライン』解説冊子 「高血圧の話」(ここをクリック)
<新しいQ&A>
【点滴(輸液)による循環血液量の増加と血圧の関係】
循環血液量が増えると血圧も上がるように説明を受けました。点滴(輸液)をした時も循環血液量が増加すると思いますが、その時に血圧が上昇して問題になることはないですか。
一般的に、血圧=循環血液量×末梢血管抵抗で表されます。健康な人では、循環血液量も末梢血管抵抗も色々な仕組みでうまくバランスが取れるように調整されています。循環血液が増えると腎臓から増えた分を出す仕組みもその一つです。通常の点滴で一時的に循環血液量が増加しても、高血圧に影響するような血圧上昇は生じない仕組みになっています。
【血圧測定が安静時である理由】
血圧が上がると脳卒中などのリスクが高まるのはよくわかります。日中動き回っている時などには血圧が上がるので、むしろ動き回った直後に血圧を測る方がリスクを正しく測定できるように思えます。なぜ安静時に計測するのでしょうか。
高い血圧によって脳心血管病のリスクが上昇するのは、心臓や血管が高い血圧に長時間さらされた結果です。血管がストレスを受けている状況を代表する血圧値としては、安静時の血圧で評価する方が良いことが多くの研究で示されています。24時間の血圧を基にした研究でも、昼間の血圧よりも夜間の血圧の方が脳心血管病のリスクをより正確に反映することがわかっています。これが、安静時に血圧を測定する理由です。運動などによって上昇する血圧は、全身に血液を送り出すために必要な生理的な反応で、上昇している時間も短いので時間をかけて進行する動脈硬化への影響は小さく、上昇の程度も状況によって大きく異なるので診断には用いません。
【減塩の必要性】
私は高血圧で薬を飲んでいる40歳代のサラリーマンです。かかり付けの先生から塩分摂取を減らすように言われていますが、最近週刊誌で塩分を減らしても血圧は下がらない、アメリカでは高血圧の塩分犯人説は終わっていると書かれていました。これは本当なのでしょうか。
塩分摂取量が多いと血圧が上昇することは、これまでに国内外の研究から明らかにされています。たしかに減塩効果の大きい食塩感受性高血圧と、弱い非感受性高血圧がありますが、非感受性高血圧でも減塩による降圧効果が弱いだけで、血圧が上昇することはありません。
日本高血圧学会は、高血圧の生活習慣改善に食塩6g/日未満を推奨しています。食塩過剰摂取は高血圧以外にも、心不全、腎機能障害、腎がんの発症に関与する可能性も指摘されています。大事なことは、5~6gに塩分を制限しても身体にとってマイナスにはならないことです。イギリスでは現在、国をあげて減塩に取り組んでいます。WHOの目標量は食塩5g/日未満です。
日本高血圧学会では、週刊誌で引用されている文献を含めて、広汎に検討し、総合的かつ慎重に検討して減塩目標を推奨しています。2年前の日本人間ドッグ学会の血圧基準値の記事でも断片的に文献を用いて、多くの市民が混乱しました。惑わされることなく、主治医によく相談して高血圧の生活習慣改善対策を進めて下さい。
日本高血圧学会は、高血圧の生活習慣改善に食塩6g/日未満を推奨しています。食塩過剰摂取は高血圧以外にも、心不全、腎機能障害、腎がんの発症に関与する可能性も指摘されています。大事なことは、5~6gに塩分を制限しても身体にとってマイナスにはならないことです。イギリスでは現在、国をあげて減塩に取り組んでいます。WHOの目標量は食塩5g/日未満です。
日本高血圧学会では、週刊誌で引用されている文献を含めて、広汎に検討し、総合的かつ慎重に検討して減塩目標を推奨しています。2年前の日本人間ドッグ学会の血圧基準値の記事でも断片的に文献を用いて、多くの市民が混乱しました。惑わされることなく、主治医によく相談して高血圧の生活習慣改善対策を進めて下さい。
私は高血圧治療を受けている72歳の男ですが、週刊誌で高血圧のことがいろいろと書かれており、その中で「欧米では血圧の上は年齢プラス90までは健康と考えるのがスタンダードになっており、高齢者が140未満に下げる必要も効果もないとされている。」とありました。欧米の基準によると、私の血圧は162までならいいということで、薬をのんで下げる必要はないのでしょうか。
血圧値は健康を判断する基準ではありませんので「年齢よりいくつ以上の血圧までが健康」とするのは適切ではありません。「人は血管とともに老いる」と言われ、年齢が進むと動脈硬化は進み、上の血圧値は加齢とともに上がります。逆に、高い血圧が持続すると動脈硬化は進展し心血管病のリスクがより増加します。従って、基本的には高齢者でも血圧値は低いほど心血管病のリスクは低いと言えるのですが個人差はあります。
高血圧治療の目的は、高血圧の持続による心血管病の発症・進展・再発を抑制して死亡を減少させることです。この目的のために、過去の多くの疫学研究・臨床試験の結果をもとに、日本のガイドライン(JSH2014)では、目安として降圧目標値を示しています。高齢者の降圧目標値として前期高齢者では一般成人と同じ140/90 mmHg未満を目指します。後期高齢者ではまず150/90 mmHg未満を目指しますが、歴年齢では判断し切れない個人差が有りますので、より個別性を重視しつつ忍容性の有る場合に140/90 mmHg未満を目指すこととしています。近年、米国で行われた大規模臨床試験では、後期高齢者でも120 mmHg未満を目指すと、心血管イベントは抑制されることが示されています。しかし、この結果をすぐに日本に当てはめることは出来ません。現段階では、まずJSH2014の上記の降圧目標値を目指していただきたいと思います。大事なことは、機械的に「年齢よりいくつ上の血圧値」を目標とするのではなく、特に後期高齢者の方は、個々に達成し得る中でより低い血圧値を目指すことが心血管病のリスクの低減にとって重要ということです。
高血圧治療の目的は、高血圧の持続による心血管病の発症・進展・再発を抑制して死亡を減少させることです。この目的のために、過去の多くの疫学研究・臨床試験の結果をもとに、日本のガイドライン(JSH2014)では、目安として降圧目標値を示しています。高齢者の降圧目標値として前期高齢者では一般成人と同じ140/90 mmHg未満を目指します。後期高齢者ではまず150/90 mmHg未満を目指しますが、歴年齢では判断し切れない個人差が有りますので、より個別性を重視しつつ忍容性の有る場合に140/90 mmHg未満を目指すこととしています。近年、米国で行われた大規模臨床試験では、後期高齢者でも120 mmHg未満を目指すと、心血管イベントは抑制されることが示されています。しかし、この結果をすぐに日本に当てはめることは出来ません。現段階では、まずJSH2014の上記の降圧目標値を目指していただきたいと思います。大事なことは、機械的に「年齢よりいくつ上の血圧値」を目標とするのではなく、特に後期高齢者の方は、個々に達成し得る中でより低い血圧値を目指すことが心血管病のリスクの低減にとって重要ということです。
【運動選手は高血圧になりにくい】
私は40歳のサラリーマンで、学生時代に陸上競技をしていて、今も市民ランナーとして各地の市民マラソンなどで走っています。最近、運動選手は高血圧になりにくいということを聞きましたが本当でしょうか。
運動習慣と高血圧との関係について調べた研究が最近発表されました。それによると、運動選手と、同じような年齢で運動をしていない人とで、高血圧になったかどうかを比べた結果、運動選手では高血圧になる率は低く、特に耐久性競技をしていた人が最も低いという結果でした。このように運動選手は、晩年になっても高血圧になる率は低く血圧値も低く、さらに晩年に運動習慣を継続している人は高血圧になる率がより低かったとの報告でした。このように若いときの運動競技、特に耐久性の運動をしていた人は晩年に高血圧になりにくく、運動習慣は生涯にわたり高血圧の予防に役立つ可能性があることが分かりました。
【減塩の確認方法】
私は現在70歳で年金生活をおくっていますが、診察時に何度も減塩の重要性を言われ、自分でも1日6gをめざし、出来るだけ塩分を取らないよう食事に気をつけています。今の食事でいいのかどうかわからないのですが、塩分摂取量はどうしたらわかるのでしょうか。
塩分は血圧と密接な関係があります。塩分を摂りすぎると体内の塩分と水分の量を調整するために血液量が増え、高血圧になるというわけです。そのため塩分摂取量を減らすことが重要ですが、そのためには自分がどれだけ食塩を摂取しているかを知ることが必要です。現代では外食や加工食品から摂る食塩が大きな割合を占めます。加工食品の成分表示に食塩を表示することは義務づけられていません。また、表示している場合でも多くはナトリウム(Na)と表示されています。ナトリウムの量と食塩の量が同じではありません。食塩の量はナトリウムの量に2.54をかけたものだということを知っておくと良いでしょう。
次にあなたが今どれくらいの塩分をとっているか調べる方法ですが、主治医の先生に塩分摂取量について検査をお願いしてください。1日の尿をためてNa量を測定する方法が正確ですが、1回の尿検査でNa量を調べればだいたいの塩分摂取量が分かります。
次にあなたが今どれくらいの塩分をとっているか調べる方法ですが、主治医の先生に塩分摂取量について検査をお願いしてください。1日の尿をためてNa量を測定する方法が正確ですが、1回の尿検査でNa量を調べればだいたいの塩分摂取量が分かります。
【ストレスと血圧】
私は45歳のサラリーマンです。今年の春異動があり職場が変わりました。なかなか新しい職場になじめずストレスを感じているのですが、それと関係があるかどうかわかりませんがこれまで降圧薬を飲んで血圧はコントロールできていたのですが、最近はかなり血圧も高くなり、これまでの降圧薬では十分な降圧が得られなくなりました。ストレスで血圧は上がるのでしょうか。
ストレスとは「緊張をもたらす事柄や状況」のことであり、精神的ストレス(怒り、不安、驚きなど)や肉体的ストレス(力をこめる、外気温の急激な変化など)があります。
現代の日本はストレス社会と言い表されるほど、日常生活において精神的ストレスを感じる場面が多いことで知られています。
何らかのストレスがかかると、普段の血圧は正常でも、中には血圧が急激に正常値を超えて上がってしまう人がいます。特に仕事中に現れる高血圧は、「職場高血圧」という名前が付けられているほど代表的なものであり、肥満の人や、両親や兄弟などが高血圧であるという家族歴のある人に多いという傾向がみられます。
このようなストレスによる高血圧は、職場で血圧を測定したり、まる1日の血圧を測る24時間自由行動下血圧測定(ABPM)などで発見できます。
早朝などほかの時間帯でも血圧を測ってみて、かかりつけの医師に相談してみましょう。
安定した血圧コントロールのために、ストレスの発散方法を身につけ、ストレスと上手につきあっていきましょう。
現代の日本はストレス社会と言い表されるほど、日常生活において精神的ストレスを感じる場面が多いことで知られています。
何らかのストレスがかかると、普段の血圧は正常でも、中には血圧が急激に正常値を超えて上がってしまう人がいます。特に仕事中に現れる高血圧は、「職場高血圧」という名前が付けられているほど代表的なものであり、肥満の人や、両親や兄弟などが高血圧であるという家族歴のある人に多いという傾向がみられます。
このようなストレスによる高血圧は、職場で血圧を測定したり、まる1日の血圧を測る24時間自由行動下血圧測定(ABPM)などで発見できます。
早朝などほかの時間帯でも血圧を測ってみて、かかりつけの医師に相談してみましょう。
安定した血圧コントロールのために、ストレスの発散方法を身につけ、ストレスと上手につきあっていきましょう。
【糖尿病と降圧薬】
私は51歳のサラリーマンですが、デスクワークが多く最近太り気味です。数年前から高血圧のため降圧薬の投与を受けています。今回の検診時にあなたは糖尿病の予備群に入りましたねといわれました。先生から今内服しているレニン・アンジオテンシン系(RA系)抑制薬はあなたに最も適した降圧薬であると説明を受けました。RA系抑制薬はなぜ糖尿病予備群になった高血圧に有効であるのか教えて下さい。
糖尿病予備群とは、境界型糖尿病のことで、文字どおり糖尿病の一歩手前の 状態、血糖値が空腹時で110-125mg/dl、食後(又は糖糖負荷後)で140-199 mg/dlを言います。
それに高血圧が加わると、正常血圧の方に比べて約2倍糖尿病になりやすくなります。
降圧薬は主に5種類あり、その中で糖尿病予防効果が強いのはARB、又はACE阻害薬です。何れもアンジオテンシンという物質を抑えて、インスリンの作用を助ける(インスリン抵抗性改善)作用があるからです。糖尿病予備群の方の血圧管理に適しています。
しかし如何に良い薬でも、薬は所詮、対症療法に過ぎません。生活習慣で起こった病気の原因療法は生活習慣を直すことしか無く、薬以前に重要な事です。運動と食事で肥満を解消し、インスリン抵抗性を改善して、糖尿病や高血圧を予防してください。
それに高血圧が加わると、正常血圧の方に比べて約2倍糖尿病になりやすくなります。
降圧薬は主に5種類あり、その中で糖尿病予防効果が強いのはARB、又はACE阻害薬です。何れもアンジオテンシンという物質を抑えて、インスリンの作用を助ける(インスリン抵抗性改善)作用があるからです。糖尿病予備群の方の血圧管理に適しています。
しかし如何に良い薬でも、薬は所詮、対症療法に過ぎません。生活習慣で起こった病気の原因療法は生活習慣を直すことしか無く、薬以前に重要な事です。運動と食事で肥満を解消し、インスリン抵抗性を改善して、糖尿病や高血圧を予防してください。
<これまでのQ&A>
タイトルをクリックされますと、Q&Aがご覧になれます。
■高血圧の成因・病態(A)
- A1.加齢と共に血圧が上がるのは生理的現象か
- A2.高血圧は動脈、静脈いずれが高いのか
- A3.高血圧はよくサイレントキラーと言われていますが、その理由は
- A4.腎性高血圧は普通の高血圧と違うのか
- A5.高血圧は遺伝するのか
■高血圧の検査・診断(B)
- B1.高血圧の治療の前に受ける検査
- B2.血圧の日内変動は高血圧患者にとって何を意味するのか
- B3.成人の血圧の分類について
- B4.家庭血圧測定の注意点と家庭血圧の高血圧基準
- B5.正常血圧の基準値
- B6.白衣高血圧・仮面高血圧
■高血圧の治療(C)
- C1.収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高血圧の治療では重要か
- C2.微量アルブミン尿は改善するか
- C3.降圧薬は一生飲み続けなければならないのか
- C4.2015年9月米国の国立機関NIHから発表されたSPRINTという研究はどの様なものか
- C5.減塩の必要性
- C6.高齢者に好ましい降圧薬
■高血圧と合併症(D)
- D1.高血圧は認知症の原因となるか
- D2.通風と降圧薬
- D3.喘息と降圧薬
- D4.透析治療に入らないためには
- D5.高血圧による臓器障害
- D6.メタボリックシンドロームの場合、高血圧治療方法は
- D7.血圧を下げると認知症になるのか
■その他(E)
- E1.子供の高血圧
- E2.なぜ5月17日が世界高血圧デーになったのでしょうか
- E3.妊婦・授乳中の高血圧治療
- E4.水銀血圧計
- E5.鍼治療で血圧が下がるか?